水素自動車とは?– 燃料電池技術(最終回)
前回の続きです。
今回でこのシリーズは最終回となります。
次は何の記事にしようかな。
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水素自動車のメリットとデメリット
メリット:
- 安価な税金
電気自動車、ハイブリッド車、水素燃料電池自動車は「超低排出ガス車」であるため、低い税率が適用される。さらに、40,000ポンド(約517万円)を超える自動車は取得後5年間、毎年の追加税が安くなるだけでなく、二酸化炭素を排出しない車を所有すると自動車税(道路税)を払う必要がなくなる。 - 渋滞税
セントラル・ロンドンなど渋滞税が課税される地域を通行しても、燃料電池自動車を運転していれば渋滞税を支払わなくてよい。 - 環境
前述のとおり、有害な排出ガスがないため水素燃料電池自動車は環境に優しい。ただし、水素の製造方法もそのメリットを語るにふさわしいものである必要がある。最も理想的なのは、再生可能エネルギー源からの製造だ。とはいえ、水素製造に化石燃料を使っていても有害な排出ガスは石油やディーゼルを燃焼するときの排出量よりも少ない。加えて、従来の燃焼機関用の石油やディーゼルを抽出する際の環境問題が水素自動車では生じない。 - 走行距離
新技術で充電時間は大幅に改善されたものの、電気自動車には走行距離に不安が残っている。しかし、タンク1つで300マイル(約482キロ)走行できる水素自動車では問題にならないと言える。
デメリット:
- 水素の補給
現在、水素ステーションの数が非常に少ないため、水素の補給が喫緊の課題である。しかし、英国政府はインフラ向上のために数百万ポンドの資金を投じて新技術を支援している。つまり、水素の補給は将来的に水素自動車の問題にはならないということだ。 - 維持費
水素ステーションの他に、燃料にかかるコストの懸念がある。現在、水素は石油やディーゼルよりも高価なため、水素自動車にかかる維持費は少なくとも当面の間、消費者の財布を直撃することになりそうだ。 - 燃料タンク
上記セクション「水素貯蔵」で説明したとおり、非常に可燃性の高い水素ガスが詰まったタンクを搭載して運転することについて、安全性への懸念がある。水素は非常に燃えやすいが、それは石油も同じであり、水素向けに使用されるタンクは設計を施して特別に強化されている。これで車両の重量とコストは上がるが、安全基準に合格してから市場に出す必要がある。つまり、安全性については問題がないと言える。
水素自動車技術とインフラの向上
水素自動車に関する否定的な見方の多くは、インフラと技術への投資で対処できる。専用の水素ステーションは電気自動車の充電スタンドを整備するよりも費用がかかるため、水素自動車の利用が増えない限り投資も促進されないだろう。ここにジレンマがある。水素自動車の利用をてこ入れするにはインフラが必要だが、水素自動車の利用がなければインフラの必要性がないとして整備が進まない。それでも、英国政府とEUはすでに利用できる水素ステーションの数を増やす動きを支援している。
自動車の走行技術自体も徐々に改善されており、水素自動車の走行距離が伸びるとともに価格も安価になりつつある。コストが下がり、効率性が上がってインフラがさらにてこ入れされれば消費者に信頼されるようになり、将来的に水素自動車の利用増にもつながる。
燃料電池車と電気自動車の違い
従来の燃焼機関は過去のものとなりつつあるようにも思われるが、水素燃料電池自動車は電気自動車との激しい競争にさらされている。
バッテリーを搭載した電気自動車も水素燃料電池自動車も走行中にガスを排出しないが、バッテリー式自動車は既存のインフラを利用して充電できる。ただし、プラグでの充電には長い時間がかかり走行距離には懸念が残っている。
未来の移動手段として支持を勝ち取るためには、どの技術で自らの抱える課題を克服できるかが問題である。