元国立大学法人職員の通訳・翻訳道!

約8年国立大学法人で事務職員として勤務した後に、英語通訳・翻訳者にキャリアチェンジしました。日々、修行中・・・。お仕事のこと、日々の勉強、翻訳など不定期に更新しています。Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.

水素自動車とは?– 燃料電池技術(2)

前回の続きです。

 

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水素燃料電池のメリットとデメリット

水素燃料電池には、従来のエンジンと比べメリットとデメリットの両方がある。燃料電池には可動部がないため、信頼性と効率性が高い。まず熱に変換されてから改めて力学的な仕事に変換されるといういわゆる「熱ボトルネック」ではなく、化学ポテンシャルエネルギーが直接、電気エネルギーに変換されるために効率性が高いのである。また、水と多少の熱を排出するのみで従来の燃焼機関のように大量の温室効果ガスを排出しないことから、水素燃料電池からの排気物質は従来のエンジンよりもクリーンである。

 

それでも、水素燃料電池には製造費用が高いなど多くの課題がある。費用の問題は、触媒として必要な白金など稀少物質の費用がかかることが主な原因である。また、最初期の燃料電池の設計では低温下での作動に弱みがあったが、その後の技術改良により解決されている。燃料電池の耐用年数も、PEM(プロトン交換膜)がサイクル試験環境で7,300時間持続するため今では他の車と同等である。

 

水素貯蔵

車内に水素を貯蔵するにあたり、懸念事項が持ち上がっている。車両内に水素が投入されると、水素ガスは高圧シリンダー内に保持される。そのため、非常に可燃性の高い水素ガスを車内に貯蔵することについて安全面の懸念があるものの、市場に出回っている自動車に厳格な安全試験に合格することが必ずしも求められているわけではない。

 

水素の輸送については、化合物のアンモニアボランを水素貯蔵に使用する研究が行われている。このアンモニアボランから、膜を用いて水素を分離できる仕組みだ。アンモニアは純粋な水素よりも安全にタンカーに貯蔵しやすいので、輸送上のメリットがある。

 

車両の燃料タンクと水素の輸送という問題に加え、水素ステーションで水素を貯蔵するという課題がある。水素は燃焼エネルギーが高く、着火エネルギーが低い。また、水素ガスはタンクから漏れやすいため水素ステーションでの爆発が起こっている。当然、この問題についても水素自動車が広く普及する前に対処する必要がある。

 

インフラ

水素燃料電池自動車を未来の輸送手段にするためには、英国、世界で水素ステーションの数を増やすなど、車関連のインフラ改善が不可欠である。水素ステーションは、圧縮水素チューブトレーラー、液化水素タンクトラック、水素パイプラインで水素を供給するか、何らかの体制をとって現場で水素を製造する必要がある。家庭向け水素ステーションの整備を呼びかける声もあるが、消費者の需要に応じたインフラを整えると費用が高額に及ぶ可能性がある。

 

規格と基準

もう一つ、水素の普及を遅らせる要因となり得るのが、水素ガスの安全性と貯蔵に関し求められる規格と基準である。さまざまな水素電気自動車について、国家間で共通の規格と基準を作る必要がある。

 

車両コストと製造

最初に市場に出た水素自動車には、トヨタのMirai、ヒュンダイのNexo、ホンダのClarityなどがあるが、現在、水素自動車は高価である。現在の購入費用は、エントリープライスで5万ポンド(約650万円)を超えるだけでなく、他と比較して車両の生産性もいまだに低い。つまり、車の発注をしてから納品までの時間が長くかかるということである。ただし、多くの企業が水素燃料電池車市場への参入を目指しているため、大半の新技術と同じように徐々に価格は下がり出すと思われる。