元国立大学法人職員の通訳・翻訳道!

約8年国立大学法人で事務職員として勤務した後に、英語通訳・翻訳者にキャリアチェンジしました。日々、修行中・・・。お仕事のこと、日々の勉強、翻訳など不定期に更新しています。Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever.

通訳 VS 翻訳

私は、翻訳のお仕事を始めた後に通訳のお仕事もいただくようになり、今も両方やっています。

翻通訳・通翻訳と言われるようにこの2つはセットで語られることが多く、互換性があるスキルと思われている気がしますが、必ずしもそうではないと思っています。

 

もちろん、どちらも対象言語への理解は深いため、ある程度はできると思います。

ただ、翻訳のプロにいきなり国際会議の同時通訳が務まるわけではなく、通訳のプロが文学の翻訳をちゃちゃっとこなせるわけではないと思っています。

そもそも、使う筋肉というか脳みそが違うと思うのです。

 

翻訳は、たとえるならば長距離走的な要素があり、単語一つひとつを調べ上げ、時には様々な参考文献を読みながら背景を調べ、裏取りをして仕上げます。

英語力のみならず、分からない言葉に対して粘り強く調べ物をする能力や読者にとって分かりやすい文章を書く力が求められると日々感じています。

 

私自身、たった一文に調べ物で30分以上かけてしまうこともあります。

ビジネスとして考えると決してよいことではありませんが、参考資料を読んでいるとあっという間にそれくらい過ぎてしまうのです。。。(改善したいです)

 

ただ、記憶力はあまり要らないかなと思います。

むしろ、記憶に頼って訳すほうが危険なので少しでも疑問に思ったらすぐに辞書や参考文献にあたるのが鉄則です。

 

通訳は短距離走的な要素があり、現場に出れば確信が持てなくてもその場で訳を完成させなければなりません。

もちろん、現場に出る前にじっくり参考資料を読んだり、出てくる話題を予想して調べたりはしますが、現場では必ずといっていいほど「?」となる単語や予想外な話題が出てくるもの。

「?」となっても、エイヤっと瞬時にお客様を納得させる訳を出す必要に迫られます。

 

その場で調べるのはまず無理なので、自分の記憶している語彙を素早く引き出す必要があり、記憶力と瞬発力が重要です。

また、スピーカーが言った内容を数語~数文単位である程度覚えておく短期記憶(リテンション)も重要です。

逐次通訳だとメモを取りますが、あくまで記憶を呼び起こすためのメモなので速記ではないのです。

 

仕事で何度か通訳者が手がけた翻訳文を拝見したことがありますが、日ごろの「エイヤっ」が染みついているのか、正直、全体的に荒い仕上がりで裏取りも甘いかなぁと思うこともままあります。

 

・・・完全に自分を棚に上げていますよね。すいません。

もちろん、そうではない方もたくさんいらっしゃると思いますし、翻訳専業であれば完璧にできるということでもないと思います!

 

逆に、私の通訳は恥ずかしながら「木を見て森を見ていない」という指摘を受けたことがあります。

単なる実力不足かもしれませんが(多分そう)、日ごろから一語一語を見ていく翻訳が染みついているのか、思い切った情報の取捨選択ができないことも根底にあるような気がしています。

 

ただ、翻訳でじっくりと原文を読むことで得られた知識や訳語の語彙は通訳にも役立つと感じています。

また、その場の状況に合わせた適切な訳語をひねりだす通訳の仕事が、翻訳の全体的な読みやすさや文脈を見る能力を向上させるとも思っています。

 

とあるエージェントさんとの面談で、「いずれは翻訳と通訳、どちらを主体にするのか選ばないといけない時が来る」とアドバイスいただいたことがあり、それがずっと頭に引っかかっています。

 

実際に、両方始めると時間のやりくりが大変だなぁと思いますし、両方を極める、ということの難しさも日々実感しています。

ただ、通訳も翻訳も好きですし、コロナで通訳の仕事がない今はどちらかに絞るべき時期でもない気がするので(というか絞れない)、しばらくは二刀流でがんばろうと思います。